提供企業:合同会社GT Designs
Cross Interviewクロスインタビュー
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寺内 元基
Genki Terauchi合同会社GT Design
代表
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「 GT Designについて 」
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会社紹介をおねがいします!
GT Designsといいます。木とデザインで地域循環型社会を創造することをビジョンに掲げ、木を使った製品やサービスを生み出す会社です。木製サーフボードづくりから得られる知識、経験、フィールドでのインスピレーションを基に、木の個性を生かした家具や木製サーフボードを製作しています。アマゾン合同会社の社員食堂へのテーブルの納品がきっかけとなり、2017年に創業しました。
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力をいれている事業はありますか??
当社の製作するサーフボードは、加工精度の高い木組みのフレームに木を張り合わせることで、空気を閉じ込めることで軽量かつ堅牢な作りをしているのが特徴です。実は、動かない空気は、最高の断熱材であるとされており、寒いと膨らむ羽毛で作られるジャケットや布団はこの空気の特性を使って作られています。そこでGT Designsでは、この動かない空気の断熱特性に着目し、木製サーフボードづくりの中空構造を応用した木製トレーラーハウス「サーフトレーラー」の開発を進めています。
現在試作中のサーフトレーラーのプロトタイプには、耐候性が高く粘りのある能登ヒバと石川県産の杉を使用し、内壁、外壁にはかほく市で伐採されたヒノキを使用します。サーフトレーラーは、全国各地の地域材で製作することが可能となっており、2024年に自作キット及び図面データの販売を計画しています。-
サーフトレーラーの試作
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サーフトレーラーのプロトタイピング
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海が抱えている課題は?
私は衛星海洋学を専門とする研究者でもあり、人工衛星に搭載されたセンサが捉える海の色から、海域の水質を診断するWebアプリ「Global Eutrophication Watch」を開発しています。世界の様々な場所で海洋環境の悪化が報告されていますが、その原因のほとんどは陸上の人間の活動に起因するものです。そのため、悪化した海洋環境の改善するためには、陸上の活動に目を向ける必要がありますが、実際にこのような当たり前ことが理解されないまま沿岸開発が進んだりします。海岸侵食の対策として海に投入される人工構造物が良い例ですが、砂が供給される河川の形状や土地利用の変化について理解しないままいくら海の中で対策をとってもその効果は時間的にも空間的にも限定的です。
年中海に通う私達サーファーは沿岸の地形の変化にとても敏感で、台風やシケの後に形成されたサンドバー(砂が堆積する浅瀬)で立つ波を享受しています。サーファーもう少し陸域の変化に視線を向けないことには、今のままではサーフィンができるポイントもこの先年々少なくなっていくことが目に見えています。サーファーには陸で起きていることにも目を向けて欲しいですし、逆に海をよく知らない山の人には、山が海とつながっているという事をもっと知って欲しいと思います。サーフィンは自然と一体となる行為ですが、波が立つ土地の木でサーフボードを作って波に乗ることで、より山と海のつながりを体感して欲しいと願っています。サーフボードの開発ストーリー動画はこちら -
環境への取組は何か行っていますか?
木製サーフボードづくりにおいては、可能な限りサーフィンその土地の材料を使うことで、木材の地域での循環を促すようにしています。また、接着剤やグラスファイバー等の化学製品を可能な限り減らし、土に返すことができるようなサーフボードづくりを目指しています。当社が製作するテーブルは、耳付きの国産材を使用し、乾燥による割れまでも意匠に取り入れることで、木の特徴を生かし自然の特性に逆らわないモノづくりを心がけています。
また、場所によっては古材やパレット等の廃材を活用し、処分されるような木材に新たな生命を吹き込むことを得意としています。-
古材や廃材を主に使った作業小屋
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リバーテーブルの曲線は、山や海で描くターンそのもの。
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木との親和性について
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あなたにとって木とはなんですか?
私にとって木とは、自然の摂理をわかりやすく教えてくれる存在です。当たり前ですが、どんな木にも根があり、葉っぱをつけて育ちますが、同じ木でも山で太陽の光を多く浴びる日表側には枝が多くつくため節が多くなります、逆に裏側の日裏側には枝が少ないため節が少なくなります。木という素材をカンナ削ると繊維方向に規則性があることに気が付きます。
枝の根本にできる節や、板目は固く割れないが、直線的な木目が揃う柾目は木目の方向に割れやすいとか、木の表側は水分が抜けると収縮し、板が反りやすいとか、数得きれない自然の教えがあります。空手の板割りパフォーマンスには必ず柾目の板が使われます。嘘だと思ったら、試しに身の回りの自称空手家とか喧嘩自慢に、板目の板を割ってとお願いしてみてください。どんな空手の達人でも板目の板は割れませんから。私が手掛ける木製品は、全てこのような自然の摂理に逆らわずに木をレイアウトし、全体がデザインされています。 -
木材業界の課題についてコメントお願いします。
日本は、もっと木材自給率を上げるべきだと思います。Global Forest WatchというWebアプリを使うと地球上の森林の増減を宇宙からほぼリアルタイムに見ることができるのですが、日本は山林資源に恵まれた国であることがわかります。にもかかわらず、遠くの国の木が伐採、加工され、今日も日本に運ばれて来ています。これだけ森林資源が豊富なのにも関わらず、日本の木材自給率が3割程度にとどまっているのは何故でしょうか?
私のように山に入り、原木から製品になるまでの一連のプロセスを経験すると、木材業界の課題が垣間見えます。木材自給率が低い理由には、木材の供給側と利用する側それぞれに原因があると思います。しかし、私はまずは消費者側が国産材や地域材を好んで求めるようにならない限りは、供給側が木材自給率を上げることに力を入れることに本腰を入れるわけがないと思っています。なので、国産材でもその利用する土地の木(地域材)、地域材よりも祖父が植えた木といったようなパーソナルな結びつきが好まれる市場を作っていく必要があるかと思っています。
木は利用する土地の気候風土で育ったものが、最もその土地での利用に適しているというのは私の信念です。これは良い木だとか、逆に悪い木だという言い方をしたりしますが、「地域材」 = 「良い木」と行った考え方がより社会に広まっていくことを願っています。 -
一緒に何かしませんか?
是非よろしくお願いします。フルタニランバーさんは、木材業界の革命児という印象があります。御社の地域材の活用に関する取り組み、木材業務システムの「treeflow」、また当社も大変お世話になっている高速木材乾燥技術「woodbe」。どれをとってみても、そう簡単にできるものでありません。
当社は少数精鋭?でやっているため大量生産は苦手です。一方、研究開発やプロトタイピングから、3D CADやCAMを用いて、木で同じ型の物を繰り返し加工するための図面や加工データを製作することが得意です。従来、デジタルデータはコピーや改ざんが容易なため、コピー作品が出回りやすく、本来の価値をデータに紐付けることが困難とされてきました。
しかし近年、ブロックチェーンと呼ばれる技術により、公共性のある台帳のようなもので、デジタルデータのその資産の真正性や所有権を証明することができるようになりました。そこで、この世の中の流れに乗り、当社のデザインを日本全国、さらに世界各地に広めたいと考えているところです。
フルタニランバーさんの全国的なネットワークと当社の技術力で、全国各地の地域材でサーフトレーラーを生産することも可能になると思っています。是非一緒に互いの価値を共有しながら、事業を進めていければと願っています。
Cross Product商品紹介
環境志向への挑戦!その波に乗る
- 能登ヒバ製 サーフボード
石川県の県木「能登ヒバ」を主に使用。能登ヒバは水に強く耐久性も高い樹種です。そして構造は、アメリカのワシントン州在住で中空構造の木製サーフボードづくりの第一人者ポール・ジェンセンの技術をベースに、障子戸にヒントを得て改良した精度の高い木組みで強度を実現しました。通常サーフボードはガラスクロスと樹脂でコーティングされた物が多い中、木材と少量の接着剤で作っていることが特徴です。今後、GT Designsと共に海における木材の活用を促進するための取り組みや木の価値を届けるセミナーなども計画していきます。
<リンク先一覧>
合同会社GT Designs
北陸中日新聞Web
<サーフボードのスペック>