フルタニランバー株式会社
コラム「森のフルタニさん」
タモ材の人気が高い理由とは?メリット・デメリットを考察してみよう
投稿日:2022.04.01/更新日:2023.07.27
建材や家具などに用いられることの多い木材。
一口に木材といってもさまざまな種類があり、用途に応じて選ぶことが重要です。
数ある木材のなかでも、強度が高く木目が美しい「タモ材」は古くから日本において特に人気があります。
今回は、タモ材(別名アッシュ材)の特徴についてメリット・デメリットを含めて解説するとともに、タモ材が使用されている代表的な家具もあわせて紹介します。
Contents
タモ材(アッシュ材)の特徴
タモ材(アッシュ材)の原料である「タモ」は、モクセイ科トネリコ属の落葉広葉樹です。
日本では主に北海道および本州北部に分布しているほか、海外ではロシアや中国などが主な生産地として知られています。
タモは樹木のなかでも大きく成長することで知られており、なかには30mの高さにまで達するものも。
また、幹の太さや1mを超えるものも存在し、古くから木造住宅の建材や大型の家具などに使用されてきた歴史があります。
日本において建材として多く用いられる樹木には、「ナラ」や「ケヤキ」、「クリ」などがありますが、そのなかでもタモは馴染みのある建材として知られています。
国産のタモ材は古くから高い人気を誇りますが、現在では林業の後継者不足などによって供給量が減少傾向にあります。
そのため、国産のタモ材だけでなくロシア産や中国産のタモ材も高い人気を誇っています。
タモ材(アッシュ材)のメリット
古くから建材や家具の材料として用いられてきたタモ材ですが、なぜこれほどまでに高い人気があるのでしょうか。
タモ材の主なメリットを3つ紹介しましょう。
しなやかで強度が高い
タモ材とほかの木材を比較したとき、しなやかで強度が高いことが挙げられます。
強い力を入れても折れにくく、たわむ性質があることから弾力性のある木材ともいえるでしょう。
日本はもともと地震が多いため、家屋の強度を十分に保つためにはしなやかな建材が求められます。
単に固い木材を用いてしまうと、地震などの揺れが発生した場合に柱や壁、基礎などに割れが生じてしまうことも。
しかし、弾力性のあるタモ材であれば、地震の揺れにもしなやかに対応でき、家屋全体の強度を高められるメリットがあるのです。
また、このような特性を活かし、建材だけでなく野球のバットやテニスのラケット、スキー板などにも用いられてきた歴史があります。
美しい木目
タモ材を中心部から縦にカットすると、芯の部分とその周辺の部分とで色合いが異なり、はっきりとした木目が現れます。
中心部は濃い褐色で、外側に向かうほど淡い色にグラデーションのように変化していくのが大きな特徴です。
また、タモという樹木は比較的真っ直ぐ成長していくため、木目も曲がりが少なく直線的なラインが見られます。
1m以上まで大きく成長したタモからは、きれいな木目を活かした大きなサイズの無垢材が加工できることから、フローリング材や柱などの建材はもちろん、ダイニングテーブルのような大型家具の原料にも最適です。
タモ材は実用性に優れているばかりではなく、美しい木目や色合いによってデザイン性にも優れた木材といえるでしょう。
狂いが少なく均一
タモという樹木は真っ直ぐに成長することから、狂いが少ないことも大きなメリットとして挙げられます。
狂いが大きい樹木の場合、1本の木を伐採し加工するときに木目の色や幅が異なっていたり、樹木の形状がいびつで加工がしにくかったりすることがあります。
しかし、タモは枝下の部分が長く、水平にカットした場合に樹形が真円に近いことから、狂いが少なく加工がしやすい特徴があるのです。
加工の工程で無駄になる部分が少なく、資源を有効に活用できる優れた木材といえます。
タモ材(アッシュ材)のデメリット
タモ材には強度が高く木目が美しいといったメリットがある一方で、デメリットも存在します。
固いため加工の難易度が高い
しなやかで強度が高いという点はタモ材の代表的なメリットであると同時に、加工の工程においてはデメリットにもなり得ます。
特に、初心者がタモ材を購入してきて自分自身で切断・加工しようと考えた場合、一般的な木材に比べて固いため手作業では時間を要することも考えられるでしょう。
また、木材の密度も高いことから、同じサイズでもずっしりと重く、木材そのものを扱うのに苦労することも。
切断の難易度が高いということは、木材の表面に細かな彫刻や意匠を施すのも簡単ではありません。
ヤスリがけや鉋がけにも力を要することから、凝ったデザインのものには不向きといえ、シンプルな家具などに用いられるケースが多い傾向にあります。
コストがかかる
タモ材は数ある木材のなかでも特に人気があり需要が高いため、価格も高価です。
たとえば、ダイニングテーブルのようなオーダーメイド家具をタモ材で製作しようと考えた場合、天板から脚まですべてをタモ材で製作しようとするとコスト高は避けられません。
そのため、木目を強調したい天板のみにタモ材を使用し、その他の部分にはタモ材以外の木材を使い分けるなどの工夫をすることでコスト上昇を抑えられるでしょう。
タモ材(アッシュ材)の経年変化
どれだけ丈夫で強度の高い木材であっても、年数が経過するごとに表面の質感や色合い、手触りなどは変化していきます。
これはタモ材に限ったことではなく、すべての木材に共通して言えることです。
しかし、タモ材とほかの木材とを比べてみたとき、経年変化の進行度合いは比較的緩やかな特徴があります。
使用環境によっても経年変化のスピードは大きく変わりますが、条件の良い場所で使用していれば木材の劣化や色合いの変化に気付かないことも。
経年変化を完全に防ぐことは物理的に難しいですが、少しでも遅らせるためには直射日光を避けることが鉄則といえます。
紫外線が照射されると日焼けが発生し、タモ材の色味や質感が低下することが多いようです。
また、タモ材の表面に塗布するワックスや塗料の成分によっても経年変化が促進されることも。
これを防ぐためには、酸化チタンが配合されたものを選ぶのが良いとされています。
タモ材(アッシュ材)の価格
一口にタモ材といっても、無垢材と集成材では大きく価格も異なり、一般的に集成材よりも無垢材のほうが高価な傾向があります。
国産のタモ材は流通量が少ないため従来はロシア産や中国産のタモ材が多く用いられていましたが、ここ数年で輸入価格は高騰。
特に新型コロナウイルスの影響によって世界にウッドショックが広がり、丸太および製材価格は以前の倍以上に上昇しています。
さらに、ロシアをめぐっては国際情勢が緊迫化していることもあり、今後さらにタモ材の価格は高騰していくと予想されるでしょう。
タモ材(アッシュ材)を使う家具
タモ材は建材や家具、スポーツ用品などさまざまな分野の製品に多用されていることを紹介しました。
今回は、そのなかでも特に需要が高い家具にクローズアップしてみましょう。
具体的にどのような家具に使用されているのか、タモ材を使って製作された家具の特徴もあわせて解説します。
机・テーブル
タモ材は美しい木目や色合いが特徴であることから、そのデザイン性を活かし机やテーブルの天板に用いられることがあります。
大きなものでは直径1mにも達するタモの無垢材は天板としても十分なサイズであることから、一枚板を贅沢に使用することで風格のある机やテーブルに仕上がります。
ベッド
柔軟性があり強度が高いタモ材は、ベッドの床板やフレームにも適した木材といえます。
耐久性の低い木材ではベッドの床板やフレームが折れてしまう危険性もありますが、しなやかなタモ材は全体重を支えられるほど十分な強度を誇るため安心して使用できます。
また、きれいな木目や色合いを活かし、床板・フレーム部分だけでなくヘッドボードにもタモ材を採用することで高級感を演出できるでしょう。
椅子・ソファー
体全体を支えるという意味では、ベッドと同様に椅子やソファーにもタモ材は適しています。
座面や背もたれなど、人が直接触れる部分にはレザーやファブリック素材が使用されますが、椅子やソファーの骨格を担うフレームには強度の十分な木材が不可欠です。
フレーム部分には金属素材が使用される場合もありますが、タモ材は適度に弾力性があるため、着座した際の衝撃を緩和してくれます。
まとめ
十分な強度があり木目も美しいタモ材は、フローリングなどの建材はもちろんのこと、テーブルやベッド、ソファーといった家具にも多く採用されています。
ウッドショックや国際情勢の変化によってタモ材の価格はさらに上昇していくと考えられているため、今後も木材市場の値動きには注視していく必要がありそうです。